平成28年度 市立敦賀病院 病院指標

当院は福井県嶺南地域の中核病院として、幅広い年齢層の患者さんに質の高い医療を提供しています。全体では、高齢化の影響で60歳以上の患者さんが多く、全体の70％を占めております。年齢別に疾患を見てみますと、10歳以下では新生児の入院や小児肺炎など感染症の入院が多くなっており、10歳代は患者数は少ないものの、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や悪性新生物の患者さんが増えております。40～50歳代では、消化器系疾患や循環器系疾患、尿路系疾患など多種多様の疾患で入院されており、60歳代では特に骨折や腸炎・虫垂炎が多い傾向にあります。20～30歳代の患者さんの約7割は女性であり、産婦人科系の疾患が多くなっています。70歳代も同じ傾向ですが、これに肺炎での入院が加わり、80歳以上のご高齢になりますと、肺炎、心不全、脳梗塞に加え、大腿骨近位部骨折が多くなっております。

当院においてがんの診断や初回治療を行った「初発」の患者さんで比較すると、胃癌が最も多く、次いで大腸癌となっており、消化器がんの治療を多く行っていることが分かります。胃癌、大腸癌に対して、内視鏡的手術、開腹手術、腹腔鏡下手術（手術創が小さく開腹と比べて体への負担が少ない）、抗がん剤治療など、各ステージや患者さんの状態に合わせた幅広い治療を行っております。肺癌の治療に関するガイドラインとしては、ステージⅠ～Ⅱの場合は手術療法が考慮されますが、平均年齢が73歳と高く、手術のリスクや患者さんの状態について相談の上、治療方針を決定します。手術療法を選択された場合には、体への負担を軽減するために、積極的に鏡視下手術を行っており、手術療法を選択されなかった場合やステージⅢ～Ⅳ期の場合は抗がん剤治療を行います。乳癌については、各ステージや癌の種類、患者さんの状態に合わせて、手術療法や抗癌剤療法、ホルモン療法、放射線治療、またそれらの組み合わせにより治療を行います。肝癌は治療後に再発することが多く、当院の患者さんも肝癌初回治療後の再発として、入院治療される方の割合が多いことが分かります。肝細胞癌に対する治療としては、肝動脈塞栓術（TAE）を中心とした集学的治療を行っています。

肺炎は、当院に入院される患者さんで最も多い疾患であり、男女差はほとんどありません。重症度別で見ますと、比較的軽症の肺炎患者が多い傾向にありますが、重症や超重症肺炎患者さんも加療しております。重症患者の平均在院日数が42.5日と長くなっておりますが、外れ値を除くと、29日となっております。超重症患者さんに関してはデータを表記しておりませんが、平均在院日数は1ヶ月程度、平均年齢は89歳でした。この結果より、成人市中肺炎は高齢になるほど重症になり、また平均在院日数が長くなることが分かります。

当院脳神経外科に入院されている患者の多くが脳梗塞であり、急性期脳梗塞治療として、t-PA静注治療（血栓溶解療法）、カテーテルによる血栓除去・再開通療法を行っております。脳梗塞は約1ケ月程度の入院期間で治療とリハビリを行い、急性期治療後に地域包括ケア病棟（在宅復帰に向けた支援を行うことを目的とした病棟）へ転棟し、自宅退院されます。また、自宅や施設へ退院することが困難な場合や不安がある患者さんは、近隣の病院と連携を図り、リハビリ継続目的で転院されます。

播種性血管内凝固（DIC）の発生率は0.12％、敗血症の発生率は0.6％と、全国値と比較してほぼ同じ発生率でした。敗血症の入院後発症については、半数が肺炎や腎盂腎炎を契機に入院となっております。平均年齢が75歳であることから、入院後も全身状態が悪化して敗血症といった重症な病態に至ってしまったと考えられます。手術・処置等の合併症については、半数以上が透析シャント狭窄による入院でした。合併症はどうしても一定の確率で起こり得ます。起こり得る合併症については、事前に可能な限り患者さんに説明したうえで、手術や処置の施行に同意をいただくよう努めております。