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心臓血管外科

心臓血管外科紹介

当院の血管外科では、大動脈瘤・閉塞性動脈硬化症・下肢静脈瘤など、血管外科領域の疾患全般の診察を行っています。非常勤医師による外来診療となりますが、大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症などで手術等の専門的な対応が必要な場合には、心臓血管外科専門施設への紹介を行います。

大動脈瘤について

Q1:大動脈瘤とはどのような病気ですか?
A1:心臓から全身に血液を送る最も太い動脈血管を大動脈といいます。心臓から横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜から下の部分を腹部大動脈と呼びます。
大動脈瘤とはこの大動脈の一部が「瘤」=「こぶ」のように膨らんだ状態のことです。
大動脈瘤は動脈壁の弱くなった部分に発生します。原因の多くは動脈硬化といわれています。また、動脈硬化の増悪因子としては高血圧、高脂血症、喫煙、糖尿病などが知られています。
 
Q2:腹部大動脈瘤にはどのような症状があるのですか?
A2:腹部大動脈瘤は症状がほとんどないのが特徴です(大きくなっても症状は出ません)。ですから、破裂して初めて大動脈瘤が見つかる場合も少なくありません。破裂した際には、激烈な腹痛や腰痛、出血によるショック状態となる場合が多く、極めて致死率の高い状態になります(死亡率は50〜80%にも上るといわれています)。

Q3:大動脈瘤はどうしたら発見できますか?
A3:大動脈瘤はほとんどが無症状ですので、人間ドックや、別の理由による検査(例えば、胆石症の検査など)で超音波やCT、MRIを行い、偶然に発見されることが大半です。
胸部大動脈瘤の診断には胸部レントゲン写真やCT、MRI検査が、腹部大動脈瘤の診断には腹部超音波検査やCT、MRI検査が有用です。
ご心配な方は、症状がなくても上記検査をお勧めします。かかりつけ医または当院にご相談下さい。
 
Q4:腹部大動脈瘤の治療法は?
A4:瘤が小さなうちは血圧を下げる内科的な治療が行われますが、大きくなって破裂のリスクが高くなると、手術が必要となります。
手術には2通りの方法があります。1つめは、お腹を大きく切って、「動脈瘤」の部分を人工血管に置き換える手術(開腹人工血管置換術)、もう1つは、カテーテル(細い管)を用いてステントグラフトを血管内に進めていき、動脈瘤のところに置いてくる手術(ステントグラフト内挿術)です。ステントグラフト内挿術は、傷が小さくてすみ、手術時間が短く、身体にかかる負担が少ないのが特徴です。

ステントグラフト内挿術について

Q5:ステントグラフト内挿術とは?
A5:ステントグラフトとはステントといわれる金属の骨格でできた筒をグラフトといわれる人工血管で被覆したものです(図1)。ステントの広がる力でグラフト(人工血管)を正常な部分の血管に押しつけて固定します。これを血管の中に留置することにより、瘤に直接的に血圧がかからないようになり、瘤の拡大や破裂の予防を行うことができます(図2)。
腹部大動脈瘤用ステントグラフト
図1:腹部大動脈瘤用ステントグラフト
ステントグラフト留置後
図2:ステントグラフト留置後
Q6:腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術は具体的にはどのようにして行うのですか?
A6:ステントグラフトは折りたたんで、直径4〜8mm程度のカテーテル内に収納された状態にあります(図3中のA)。両鼡径部(両側の足の付根)を4〜5cm切開してカテーテルを動脈内に挿入し、レントゲン透視下に大動脈瘤のある部位まで運び、収納してあったステントグラフトを広げます(図3中のB)。放出されたステントグラフトは、ステント自身の拡張力と患者さん自身の血圧によって広がって血管内壁に張り付き、自然に固定されます(図2)
 この方法だと両鼡径部(両側の足の付根)を数cm切開するだけで治療が行えるため、腹部を大きく切開する必要がなくなります。患者さんの身体にかかる負担、手術時間、出血量など、より少ない状態で動脈瘤の治療が可能です。
図3
A:折りたたまれた状態のステントグラフト。この状態のまま目的の位置(動脈瘤)まで運び、広げます。
B:広がった状態のステントグラフト。
Q7:だれでもこの治療を受けることが出来るのでしょうか?
A7:残念ながら、すべての方に行えるわけではありません。血管の太さや曲がり方、動脈瘤のできた場所などで、この治療を行えない方もいらっしゃいます。当院ではまず血管外科を受診していただき、CTなどの検査を行った上で、本治療法が適しているか、ご本人と相談させていただきます。
 
Q8:ステントグラフト内挿術の欠点はありますか?
A8:手術中に造影剤を使うため、腎機能の悪い患者様には負担になることがあります。また、本治療法は比較的新しい治療ですので、長期的な成績(ステントグラフトの耐久性など)が確立されておりません。
特有な合併症として、エンドリーク(動脈瘤内に血液が漏れる現象)、ステントグラフトの移動などが稀にみられることがあります。そのため、治療後もCT等による定期的な検査が必要です。

まとめ

腹部大動脈瘤は症状がほとんどないものの、一旦破裂すると極めて致死率の高い恐ろしい疾患です。そのため、破裂する前に発見し、治療を行うことが肝要です。ステントグラフト内挿術は従来の手術(開腹人工血管置換術)に比べて、すべてにおいて優れているわけではありませんが、“身体への負担が少ない”(傷が小さく開腹が不要、手術時間が短い、出血量が少ない)というメリットは大きいと思います。ご高齢の方、心臓や脳などに大きな病気を抱えていて従来の手術は困難と考えられていた患者さんにも行える場合があります。ただ、どちらの治療が適しているかは個々によって異なりますので、よくご相談させていただきたいと思います。
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